ニキビ治療にガイドラインはあるの?

尋常性痤創治療ガイドラインとは

参照:尋常性痤創治療ガイドライン2017
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/127/6/127_1261/_pdf

日本皮膚科学会によって策定されている尋常性痤創治療ガイドラインが、2017に改訂されています。
2008年にアダパレン(ディフェリンゲル)が導入されて以降、ニキビ治療が大きく前進し、幾度となくガイドラインは改訂されてきました。
この2017年度版では、ニキビとニキビに似たような症状を識別すること、「酒さ性ざ瘡」の治療方針が異なる点などについても言及されています。

より完成度の高いガイドラインがあることは、患者にとってとても心強いことです!
しかし、個々の患者の症状に合う薬を、線を引いたように医師が処方できるわけではないのも事実。

医師は患者の年齢や性別、生活習慣、生活形態、経済事情も考慮して治療法を選んでいく必要があります。

中高生くらいまでなら、ある程度は保護者が薬の使用や、治療に前向きな生活習慣を管理することができます。

しかし、中高生であっても保護者と離れて暮らす場合や、社会人前の青年期、社会人になってからなど、成長過程や環境によって本人のニキビ治療への理解度や積極性が全く異なるものとなるでしょう。

コンプライアンスではなくアドヒアランス

医師が治療において最も求めるべきところは、アドヒアランス「患者自身が病気を理解し、医師の治療方針の決定に賛同し、自ら積極的に治療に関わる」の向上です。

かつては「コンプライアンス」という言葉でした。
コンプライアンスは「医師の指示に患者がしたがう事」を主に意味していましたが、現在は前述の通りの意で、「医師と患者の相互理解を深めること」に重点を置くようになりました。

医師から指導する自宅でのケア方法や注意事項を日常しっかり守っていただくには、最終的には本人の強い意志無くしては時間だけが無駄に過ぎ、症状が改善されない状態が続くことになります。

ニキビの悪い状態が長く続くと、患者本人の性格上の積極性や自信を減退させ、進路や将来にも影響が出てきます。

医師は、「患者の肌になぜニキビができるのか?この薬を付けるとなぜ刺激が起こるのか?いつまでこの状態が続くのか?治療を受けるとどのような改善が期待できるのか?」などをよく説明し、治療計画を立てそれを患者と共有し、患者自身が治療を続けたいと思わせることが必要です。
なぜなら、下記に述べる現在のニキビ治療薬は非常に優秀になっており、そのぶん、医師も患者のQOLに気を配る余裕をもち、あらゆる視点から患者を診察することができるからです。

皮膚科学に特化した製薬会社、マルホによるレポートによると、皮膚科診療において全体のアドヒアランス率が50~60%であるのに対して、ニキビの場合13.38%(若年者)とかなり低いことがわかっているようです。

つまり、医師に望まれることは、今や正しい診断、正しい治療にとどまってはいけない事を意味しています。

ガイドラインにおける治療法

ガイドラインでは、炎症を抑える期間を「急性炎症期」とし、目安を3か月としています。医師の提示した治療法と患者のアドヒアランスにより、現在の治療薬であれば長くとも3か月で症状が落ち着くことを意味しています。

ガイドラインで推奨している第一選択肢の治療薬は、
過酸化ベンゾイル(BPO)
アダパレン(ディフェリンゲル)
抗菌薬(内服・外用複数種類あり)
を指し、必要に応じステロイド剤を足すなど、ほとんどのニキビはこれらの組み合わせで治療していけます。

さらに、「選択肢の一つとして推奨する」プラスアルファの治療としては、面庖圧出やビタミンC導入、漢方、非ステロイド性抗炎症薬、アゼライン酸、イオウ製剤、ケミカルピーリングがあげられています。

ニキビの急性炎症期と維持期

ニキビ治療は、「急性炎症期」の3か月が過ぎて症状が落ち着いても、終わるわけではありません。再発防止のための「維持期」に移ります。

治療法や治療薬、その他医師の指導が適切であるにもかかわらず、3か月を過ぎても炎症が治まらない場合は、「アドヒアランスが低い」と言えるかもしれません。
また、アドヒアランスを高く守っていたにもかかわらず改善が見られない場合は、治療法を見直す必要があるという事です。

更にアトピー性皮膚炎や他の疾患が併発している場合は、治癒は一筋縄ではいかないでしょう。

ニキビ治療とは、この急性炎症期と維持期の全期間を通じて、これまでの食べ物やライフスタイル、スキンケアを見直し、正しい方法を指導し、そして最終的にはニキビ痕(ざ瘡瘢痕)を残さないことがゴールです。

保険診療のみであっても、早期に正しく治療すれば、現代は「でこぼこニキビ痕」や「みかん肌」にまで悪化するはずがない時代です。
ニキビ痕ができてしまった人でも、残さないことが可能な時代です。

ニキビに悩んでいる人はぜひ前向きになって、納得のいく説明をしてくれる医師と出会ってください。
そして自信にあふれた自分になって、ニキビのせいで何かをあきらめるような人生を送らないでいただきたいと願っております。

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